自宅の防犯から学ぶ、ゼロトラスト時代のセキュリティ戦略(ヒロ田中のお知らせです!)

こんにちは。ランシステムのヒロ田中です。今回のお知らせです!

昨今、サイバー攻撃の手法は年々高度化・巧妙化し、かつての「ウイルス対策ソフトを入れていれば安心」という時代は終わりを告げました。特に中小企業や自治体においても、標的型攻撃やランサムウェア被害、内部不正など、現実に被害が発生するケースが急増しています。

前回のコラムでは、IPAの机上演習(TTX)を通じて、インシデント発生時の対応力を養う方法をご紹介しました。今回はその一歩手前、「そもそも日頃からどう守るか」という視点で、セキュリティの3大要素であるゼロトラストEPP(Endpoint Protection Platform)EDR(Endpoint Detection and Response)ついて考えてみたいと思います。

難しい理論や専門用語ではなく、「自宅の防犯」に例えて解説します。ぜひ、自分ごととして捉えていただければ幸いです。

目次

ゼロトラスト:家族でも「信頼しすぎない」防犯意識

かつての防犯対策は、「玄関の鍵を閉めていれば安心」といった、いわゆる“境界型防御”が一般的でした。しかし、もしその鍵がピッキングされたら?一度入られてしまえば、家の中は“フリーパス”になります。

ゼロトラストの考え方は、この前提を覆します。たとえ家族であっても、「無条件に信頼しない」のが基本方針です。

  • 家族でも個別の鍵を持たせる
    • 一人ひとりに認証情報を設定し、誰がいつどこにアクセスしたかを記録します。
  • 部屋ごとのアクセス制御
    • 金庫のある書斎や、子どもに触れてほしくない薬品棚などには、指紋認証など多要素認証を導入。
  • 常時モニタリング
    • 防犯カメラで行動を記録。不審な動きをすぐに検知できるようにします。
  • 侵入された場合は封じ込める
    • 万一入られても、全室に移動される前に隔離する設計(ネットワークセグメント化)。
  • 定期的な見直し
    • ライフステージや家族構成の変化に応じて、ルールや設備をアップデート。

社内システムも同様です。「一度ログインできたら全部見える」状態は非常に危険。ゼロトラストでは、アクセスごとに“信頼せずに検証する”ことで、組織の内部にも緊張感をもたせる構成が重要です。

EPP:玄関での「入口チェック」

ゼロトラストで内部を守る一方で、まず最初に「外からの侵入」を防ぐことも不可欠です。そこで登場するのがEPP、エンドポイント保護プラットフォームです。

EPPは、端末に入ってくる通信やファイルを「門番」としてチェックし、怪しい動きがないかを見張っています。

  • 顔認証で既知の危険人物をブロック
    • 過去に問題を起こしたプログラム(既知のマルウェア)はすぐに拒否。
  • 挙動から怪しさを察知
    • たとえば、夜中に急に活動するなどの異常挙動を検知。
  • 危険な持ち物を持っていないか確認
    • 脆弱性を突くファイルや不正なスクリプトを検出・除去。

特に、テレワークや外出先での業務が増える中、社内ネットワーク以外の環境でも端末を守る「入口の守り」として、EPPの存在価値はますます高まっています。

EDR:侵入後の「鑑識官」

どれだけ厳重に守っていても、100%の防御はあり得ません。だからこそ、侵入後の「検知」「分析」「対応」が必要です。これを担うのがEDRです。

EDRは、万が一内部に侵入された後でも、被害を最小限に食い止める“鑑識官”のような存在です。

  • どこから入られたかを特定
    • ログを辿って、脆弱性経由か、人的ミスかを分析。
  • どの部屋に入ったか(どのファイルに触れたか)を記録
    • :不正操作やデータ改ざんの痕跡を明確にします。
  • 犯人の目的や手口を推定
    • 情報の持ち出しなのか、妨害なのか、背景にある意図を探ります。
  • 再発防止策を提案
    • 単なる「復旧」に留まらず、次に同じことが起きないための対策を設計。

EDRは、単なるログの記録ではなく、攻撃の「全体像」を浮き彫りにするツールでもあります。最近ではAIによる自動分析や、SOCとの連携も進化しています。

3つの連携で、暮らしも仕事も安心に

EPP・EDR・ゼロトラスト——これらは「三位一体」で機能することで、最大限の防御力を発揮します。

  • ゼロトラスト社内外を問わず、誰であれ検証
  • EPPまず入れない、入口で食い止める
  • EDR万が一の際に迅速対応し、原因も究明

例えるなら、EPPは“門番”、ゼロトラストは“部屋のロックと監視カメラ”、EDRは“事件後の調査官”。それぞれが自律的に働きつつ、全体として「安全な暮らし(=業務)」を支えているのです。

全社員がセキュリティ文化の推進者に

IT部門や経営層だけでなく、現場の理解と実行力があってこそ、セキュリティは真に機能します。

特にミドルグラスの方は、後輩への教育、他部署との橋渡し、現場の声を吸い上げて仕組みに反映する立場にあります。だからこそ、まず自分自身が「ゼロトラスト」「EPP」「EDR」を理解し、自分の言葉で語れるようになっていただきたいのです。

防犯意識が日常を守るように、セキュリティ意識が組織を守ります。どうかこの機会に、身近なイメージで捉え直してみてください。

実務応用のヒント:明日から取り組める3つの行動

理解するだけでなく、実践に結びつけることが重要です。そこで、ゼロトラスト・EPP・EDRを現場で活かすために、ミドルクラスとして明日から始められるアクションを3つご提案します。

まずは「なぜこの権限が必要か?」という視点を日々の業務に取り入れてみましょう。
業務に必要な最小限のアクセス権だけを付与するだけでも、ゼロトラストの第一歩となります。ファイルサーバーや業務システムの閲覧・書き込み権限を定期的に見直すことは、情報漏えいリスクの軽減に直結します。

次に、セキュリティ教育の“つなぎ役”としての役割を意識してみてください。
技術者の言葉だけでは伝わりにくいセキュリティの概念も、現場の言葉に置き換えて伝えることで、より深い理解を得ることができます。これは、業務現場を熟知するミドルクラスだからこそ担える重要な役割です。

最後に、インシデント発生時の「初動訓練」を現場に提案してみてはいかがでしょうか。
EDRを最大限に活用するには、発見から報告、初期対応までの一連の流れが整理されていることが欠かせません。システム部門と協力し、簡単なロールプレイや対応シミュレーションを行うことで、万が一の際の反応力が格段に高まります。

セキュリティは「人」が中心にある

サイバーセキュリティの要は、技術ではなく「人」にあります。どれほど高度なツールを導入しても、運用する側が理解し、正しく使えなければ効果は発揮されません。

  • ゼロトラストは、信頼から始めないという“考え方”。  
  • EPPは、入り口で守る“盾”。  
  • EDRは、万が一の際に真価を発揮する“探偵”。

この3つが一体となってはじめて、「起きない」「見逃さない」「繰り返さない」体制が整います。
皆さまがこの仕組みの中で“文化の伝道者”として活躍することを、心から期待しています。

ご一読いただき、ありがとうございました。

おわりに:安心を、仕組みでつくるために

ゼロトラスト、EPP、EDRという3つの要素を理解し、日常業務の中に落とし込むことは、セキュリティ対応力の本質的な強化につながります。そして、そのための仕組みづくりやツール選定にも、確かな視点が必要です。

ランシステムでは、テレワークやオフィスの働き方に合わせた包括的なセキュリティ対策をご提案しています。もし「具体的にどうすればよいかわからない」「導入までのステップを知りたい」とお考えでしたら、以下のページをご覧ください。

皆さまの安心と、組織の持続的な成長の一助となれば幸いです。

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