こんにちは。ランシステムのヒロ田中です。今回のお知らせです!
近年、私たちの生活はデジタル化の波に乗り、金融取引も例外ではありません。スマートフォン一つで株の売買や資産管理ができるようになった一方で、その利便性の裏には常にサイバー攻撃の脅威が潜んでいます。特に、証券口座への不正アクセスは、私たちの大切な資産を直接脅かす深刻な問題であり、そのきっかけの多くがフィッシング詐欺にあることは、もはや日常的なニュースとなっています。今回は、その証券口座を狙う巧妙なサイバー攻撃、フィッシング詐欺の実態と、私たちにできる効果的な対策について深く掘り下げていきます。
巧妙化するフィッシング詐欺:最近の動向から学ぶ

「あなたの口座に不審なログインがありました」「本人確認のため、以下のリンクから情報更新をお願いします」。このような文言を含むメールやSMSを受け取った経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。これが典型的なフィッシング詐欺の手口です。最近ではAI技術の進歩により、フィッシングメールの文章はますます自然になり、本物の企業が送るメールと見分けがつきにくくなっています。差出人メールアドレスの偽装も巧妙で、ドメイン名が一見正しく見えても、よく見るとわずかに異なる文字が含まれている、といったケースも珍しくありません。
つい先日も大手金融機関を装ったフィッシングメールにより、多数の顧客情報が抜き取られ、実際に不正な送金が行われたという報道がありました。このようなニュースはもはや対岸の火事ではありません。私たちは常にデジタル社会に潜む魔の手に対して警戒を怠らない必要があります。フィッシング詐欺は、個人の情報リテラシーの隙間を狙ってきます。私たちが「まさか自分が」と思っている間に、悪意ある攻撃者はその油断を利用してくるのです。
なぜフィッシング詐欺は繰り返されるのか?

フィッシング詐欺の目的は、多くの場合、クレジットカード情報、銀行口座のログイン情報、そして今回テーマとなっている証券口座のIDやパスワードなどを不正に入手することです。これらの情報が悪意ある第三者の手に渡れば、預貯金の不正引き出し、クレジットカードの不正利用、そして保有する株式や投資信託の勝手な売却、さらには身に覚えのない株の購入など甚大な被害に繋がる可能性があります。
その手口は非常にシンプルですが、だからこそ巧妙です。
- 偽装
有名な金融機関、ECサイト、宅配業者などを装い、信頼を勝ち取ろうとします。 - 誘導
メールやSMS内のURLをクリックさせ、偽のログインページに誘導します。 - 詐取
偽のページで入力されたID、パスワード、暗証番号などを盗み取ります。 - 悪用
盗み取った情報を用いて、実際に不正アクセスや不正利用を行います
緊急性や不安を煽る文言を使うことで、受信者に冷静な判断をさせないよう仕向けるのが常套手段です。「アカウントがロックされます」「今すぐ確認しないとサービスが停止します」といったメッセージはまさしくその典型例です。
証券口座を守るための強固な対策:具体的な行動例
このような脅威から大切な資産を守るためには、私たち一人ひとりが具体的な対策を講じることが不可欠です。
- 不審なメールやSMSのリンクは絶対にクリックしない
これが最も基本的な対策です。もし内容が気になる場合は、メールやSMSに記載されたリンクではなく、自分でブックマークしておいた公式ウェブサイトや、公式アプリから直接アクセスして確認しましょう。
具体例:「○○証券から緊急のお知らせ」というメールが来たら、メール内のリンクをクリックせず、普段使っているブックマークから○○証券の公式サイトにアクセスし、お知らせがないか確認する。あるいは、○○証券の公式アプリを開いて通知を確認する。URLが
〇〇syouken.com
ではなく〇〇syouken.co.jp.xyz
のように少しだけ異なっているケースも多いので、メールの送信元アドレスやURLを安易に信用しないことが重要です。- 多要素認証(MFA)の導入
パスワードだけでなく、スマートフォンアプリで発行されるワンタイムパスワード、指紋認証、顔認証などの複数の認証要素を組み合わせる「多要素認証」は、フィッシング詐欺に対する最も強力な防御策の一つです。たとえパスワードが漏洩しても、もう一つの認証がなければ不正ログインは困難になります。多くの証券会社が導入を進めているため、必ず設定しましょう。
具体例:ログイン時にパスワードを入力した後、登録済みのスマートフォンに送られてくる6桁のワンタイムパスワードを入力しないとログインできない設定にする。あるいは、スマートフォンの指紋認証や顔認証で本人確認を行うことで、二段階の認証プロセスを踏むようにする。これは、たとえフィッシングでIDとパスワードが盗まれても、攻撃者があなたのスマートフォンを持っていなければ不正ログインできないため、非常に有効です。
- パスワードの使い回しをやめる
複数のサービスで同じIDとパスワードを使い回すのは非常に危険です。どこか一つのサービスから情報が漏洩した場合、芋づる式に他のサービスにも不正アクセスされるリスクが高まります。複雑で推測されにくいパスワードをサービスごとに設定し、定期的に変更する習慣をつけましょう。パスワード管理ツールを活用するのも有効です。
具体例:証券口座のパスワードと、ECサイトやSNSのパスワードを全く別のものにする。例えば、「証券口座用の複雑なパスワード」と「SNS用の別の複雑なパスワード」を使い分ける。また、パスワードは「誕生日」や「petの名前」など推測されやすいものは避け、大文字、小文字、数字、記号を組み合わせた10桁以上のものを設定しましょう。パスワード管理アプリを使えば、安全に複数の複雑なパスワードを管理できます。
- セキュリティソフトの導入と更新
PCやスマートフォンに信頼できるセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ちましょう。マルウェアや不正なサイトへのアクセスを検知・ブロックしてくれます。
具体例:セキュリティソフトを導入し、定義ファイルを常に最新の状態に保つ設定にしておく。これにより、フィッシングサイトへのアクセスを検知して警告を出したり、不正なプログラムがダウンロードされるのを防いだりできます。
- OSやブラウザの最新化
利用しているOS(Windows、macOS、iOS、Androidなど)やウェブブラウザ(Chrome、Edge、Safariなど)は、常に最新バージョンにアップデートしておきましょう。これらには、セキュリティ上の脆弱性を修正するパッチが含まれていることが多いため、怠ると攻撃の標的となる可能性があります。
具体例:スマートフォンやPCの「設定」から、OSやアプリの自動アップデートを有効にする。もし手動でアップデートしている場合は、定期的に更新通知を確認し、速やかに適用しましょう。古いバージョンのOSやブラウザには、すでに攻撃手法が確立されたセキュリティホールが存在する可能性が高く、そこから不正侵入を許してしまうリスクがあります。
- 定期的な口座状況の確認
証券口座のログイン履歴や取引履歴、資産残高を定期的に確認し、身に覚えのない取引やログインがないかをチェックする習慣をつけましょう。異常を早期に発見できれば、被害を最小限に抑えられます。
具体例:月に一度は必ず証券口座にログインし、取引明細や入出金履歴、ログイン履歴などを確認する。もし身に覚えのない株の売買や出金があった場合は、すぐに証券会社に連絡し、口座の凍結や調査を依頼しましょう。早期発見が被害拡大を防ぐ鍵となります。
ITパスポート試験から学ぶ情報セキュリティの基礎
こうした情報セキュリティの知識は、もはや特定の専門家だけのものではありません。IT技術が社会のあらゆる側面に浸透した現代において、業種や職種を問わず、すべてのビジネスパーソンに求められる必須の基礎知識となっています。それを体系的に学び、理解度を測るための国家試験が「ITパスポート試験」です。
ITパスポート試験は、単にIT技術の専門知識を問うだけでなく、情報セキュリティ、ネットワーク、データベース、プロジェクトマネジメント、企業活動と法務といった幅広い分野から出題されます。これは、デジタル化されたビジネス環境で働く上で、ITを正しく理解し、適切に活用し、そして潜むリスクから身を守る能力が不可欠だからです。特に、サイバー攻撃の脅威が日常化する中で、情報セキュリティに関する知識は重要な出題範囲の中心に位置づけられています。
ITパスポート試験では、以下のようなテーマが具体的に問われます。
情報セキュリティの脅威と対策
これは、私たちが日々直面するサイバー攻撃の手口とその防御策に関する知識です。例えば、今回のコラムで詳述したフィッシング詐欺をはじめ、コンピュータウイルスやランサムウェアなどのマルウェア、大量のデータを送りつけてシステムを機能停止に追い込むDoS攻撃、ソフトウェアの弱点である脆弱性といった多様な脅威の種類が問われます。その上で、これらの脅威から情報を守るための具体的な対策として、認証(パスワード、生体認証、多要素認証など)、暗号化、アクセス制御、ファイアウォールといった技術的な側面や、物理的なセキュリティ対策についての基礎知識が問われます。試験では、「フィッシング詐欺の説明として最も適切なものはどれか?」「多要素認証のメリットは何か?」といった形で、具体的な手口や対策の原理の理解度が試されます。
情報モラルとコンプライアンス
デジタル社会における倫理観と法的責任に関する重要な分野です。個人情報保護の重要性はもちろんのこと、ソフトウェアの著作権、ビジネス上の秘密を守る不正競争防止法、サイバー攻撃に関連する不正アクセス禁止法といった法的側面についての基本的な知識が問われます。また、SNSの適切な利用、情報発信におけるモラル、フェイクニュースの見極め方など、情報を取り扱う上でビジネスパーソンとして守るべき倫理観や社会的な責任も含まれます。これは、私たちが日頃から情報をどのように扱い、どのような行動をとるべきかを考える上で非常に重要です。
リスクマネジメント
ビジネス活動においてITが果たす役割が大きくなるにつれ、情報システムに関連するリスクをいかに管理するかが重要になります。この分野では、情報漏洩やシステム障害、災害によるデータ損失といった潜在的なリスクに対し、どのように事前に特定し、分析し、対策を講じるか、そして実際にリスクが顕在化した場合に、いかに迅速に復旧し、事業を継続するか(事業継続計画:BCPの基本的な考え方)といった一連のプロセスと対策が問われます。例えば、「システムの災害対策として適切なものはどれか?」といった形で、具体的なリスク対策の知識が試されます。
ITパスポート試験の学習は、私たち一人ひとりが情報セキュリティの「守りの意識」を高め、デジタル社会を安全に生き抜くための基礎を築く上で非常に有効です。それは単なる試験対策に留まらず、ビジネスの現場でITを適切に活用し、変化する社会のニーズに対応できる人材となるための第一歩であり、実生活におけるデジタル防衛力を高めることに直結する、現代人にとっての必修科目と言えるでしょう。
デジタル社会の「自己防衛」意識を高く持つ

証券口座への不正アクセスは、一度発生すれば取り返しのつかない事態に繋がりかねません。しかし、適切な知識と対策があれば、そのリスクを大幅に低減することができます。証券会社や金融機関はシステム面でのセキュリティ強化に日々努めていますが、最終的に情報を守る「最後の砦」となるのは、私たち利用者一人ひとりのセキュリティ意識と行動です。
「おかしいな」と感じる直感、そして日々の地道なセキュリティ対策が、デジタル時代の資産を守る最大の武器となります。最新の脅威に関する情報を常に収集し、適切な対策を講じながら、安心・安全なデジタルライフを送るための「自己防衛」意識を高く持ち続けましょう。


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