ランシステム黒澤によるネツエン実験室 第一回「停電対策」

ネットワークエンジニアの実験室、略してネツエン実験室として(不定期連載)第1回目コラムのテーマは「停電対策」にしました。なんといってもネツエンの命の源、電源が絶たれてしまうとなにもできません。日本の気候は、温帯湿潤気候で、雨が多くこれから特に落雷を含め電源トラブルが増える季節に入ります。今回は、停電対策でポータブル電源をどこまで活用できるか、ヤマハのRTXシリーズを実際にポータブル電源につなぎ、どの程度稼働するのか実験をしました。

筆者は、全国に100店舗以上店舗展開するネットカフェやカラオケなどのアミューズメント施設、温浴施設、ホテル、飲食店などの様々なネットワーク、POSシステムなどを含め、過酷な環境で動作する機器の運用保守経験からシステムを安定稼働させるために電源は最も重要な要素の一つと考えています。せっかくの機会なので、実験レポートの前に少し電源の基礎知識に少し触れておきたいと思います。

電源の基礎知識(周波数 Hz

 まず日本の電源事情においては、東日本50Hz、西日本60Hz問題がある。ネットワーク機器やパソコンなどの精密機器は、AC(交流)をDC(直流)に変換して動作しており、変換する装置が両方の周波数(Hz)に対応しているので意識することはほとんどない。黄色枠の様に50/60HzとなっていればOK。

↑レッツノートのACアダプタの仕様
↑ヤマハ RTX1210の電源仕様

周波数の影響を受けるのは、カメラ映像のちらつきの方が最近は多いかもしれない。フリッカーといって、蛍光灯の点滅とカメラの設定があっていない場合に起こる。カメラの設定で、ちらつきを抑えられるので気になる時は試してみよう。以下はWindowsのカメラの設定。

蛍光灯以外に、モーターを動かすような家電など基本AC(交流)をそのまま使う装置は周波数の違いで正常に動作しないこと、最悪故障の原因となるので注意してほしい。東日本と西日本をまたぐ引越しの際には注意しましょう。

電源の基礎知識(電圧)

電源について海外に目を向けると電圧の違いが出てくる、日本が100Vである事は知っていると思うが、海外では200Vから240Vが割と多い。最近では、日本で売られている機器でも100-240V対応が多い。最初の写真の機器は赤枠の通り100-240V対応となっている。海外に持ち出す際はプラグ形状だけではなく、必ず対応電圧を確認してください。また、電源の使用とは関係ありませんが、ヤマハRTX1210は、海外で使用する場合、サポート・保証対象外になるようです。

http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/FAQ/Intro/oversea.html

電源の基礎知識(波形)

いよいよ、今回の実験レポートの本題に近づいてきました。ポータブル電源を選ぶ際に重要な要素となります。ポータブル電源からAC(交流)出力される電気の波形のお話です。矩形波、正弦波、修正波(疑似正弦波)の様に3種類あるが、精密機器などをつなぐ際は必ず正弦波のポータブル電源を準備してください。一般的な家庭用電源の波形が正弦波です。

矩形波、修正波(疑似正弦波)のポータブル電源を使用した場合、機器が正常に動作しない、故障の原因となるので、正弦波のポータブル電源を用意しましょう。

実験レポート

いよいよ実験レポートです。実験環境は以下の通りです。

ポータブル電源

Jackery ポータブル電源 700

  192000mAh/700Wh、定格出力500W、瞬間最大出力1000W

接続機器

1台目:ヤマハRTX3500 最大消費電力(皮相電力) 37W(38VA)

2台目:ヤマハRTX1210 最大消費電力(皮相電力) 14.5W(28VA)

消費電力を増やすために、同一LANポートにLANケーブルをつなぎLOOP状態を作ります。

RTX3500は、「show environment detail」コマンドでコアごとのCPU使用率を確認できます。4コアある機種で1つのコアの使用率が100%で全体として25%の使用率であることが分かります。

RTX1210はコアが1つなので、全体の使用率が100%でコンソール操作がもたつきます。

RTX3500、RTX1210両方つなぎ待機電力が6W、RTX3500の電源をいれると消費電力が28W、続いてRTX1210の電源を入れて消費電力42Wになる事を確認。

約4時間後に状態を確認、消費電力42Wでポータブル電源の残量72%

約8時間半後に状態を確認、消費電力40Wでポータブル電源の残量43%

約10時間後に状態を確認、消費電力39Wでポータブル電源の残量33%

約12時間後に状態を確認、消費電力36Wでポータブル電源の残量18%

電源の残量を縦軸(Y軸)として、時間の経過を横軸(X軸)でプロットしたところ、上記のようにきれいな直線のグラフとなった。予想通りの結果ではありますが、消費電力が大きく変わらない環境においては、比例計算でポータブル電源の持ち時間を計算できそうなことが分かった。

本内容を踏まえ簡易的ではありますが、ポータブル電源容量と平均消費電力を入力すると何時間くらい、電源供給を継続できるか計算できる表を作ってみた。単純な比例計算なので、表計算にするまでもなく、電卓でも十分な気もしますが参考までに共有いたします。

実験動画

実験内容を動画撮影しておきましたので、お時間のある方はご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=LxO1BRlM1Us

※エクセルファイル「電源供給可能時間を計算するエクセル」は以下よりダウンロードください。

まとめ

スマホの普及とともに、安価に大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載したポータブル電源を調達することが可能なりました。スマートフォンや携帯電話の基地局は停電でも稼働できる状態にあり、企業の通信環境においても出来る限り通信が可能な状態を維持することが求められます。例えば、オフィスビルは電気の年次点検などで停電することがあります。昨今ではテレワークでオフィスに出社せずに業務をしているケースがあります。こういった場面でもVPN環境のダウンを防ぎたい要望があると思います。また、ポータブル電源を確保しておくことは災害対策に活用できます。そういった観点からも、総務、情報システムの立場の人間は設備投資しておくことは損ではないと感じていただけたでしょうか。

※参考情報

Jackery ポータブル電源 700https://www.jackery.jp/products/explorer-700
ヤマハRTX3500 https://network.yamaha.com/products/routers/rtx3500/spec
ヤマハRTX1210 https://network.yamaha.com/products/routers/rtx1210/spec

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