2022年3月10日、「医療・介護現場のDX・ネットワーク・セキュリティ解説セミナー」と題したオンラインセミナーを開催し、非常に多くの方にご聴講いただき、各社のソリューションにご興味をお持ちいただきました。ご聴講ありがとうございました。
本セミナーでは、医療・介護施設のネットワークで高いシェアを持つヤマハ社と、セキュリティソリューションの代表格であるエフセキュア社、医療・介護業界でITの知見を持つイーズトラスト社の皆様をお招きし、医療・介護現場のDX・ネットワーク・セキュリティについて各社の視点から解説いただきました。
なお、当社からはシステム外販部 部長 黒澤 一秀が登壇し、当社でも活用しているDXソリューションの中から、医療・介護現場でも活用できるDXソリューションをご紹介しております。
本レポートでは各社の講演概要について記載いたします。ご興味がございましたら是非ご一読ください。
基調講演
おうちにかえろう。病院のDX 〜ペーパーレス、ワイヤレス、ファイアレスの最前線〜
TEAM BLUE 代表 安井 佑氏
昨今、高齢者の数は増え続け、多死社会、看取り難民の増加傾向にありますが、厚労省としては病院の体制を考えれば、病床数を増やすより、在宅や介護施設での看取りを推奨したいと考えているようです。
そうした中で、「自宅で自分らしく死ねる。そういう世界を作る。」を理念として掲げる医療法人社団焔は、2013年からやまと診療所として在宅医療サービスを提供してきましたが、昨今の患者を取り巻く環境から2021年に「おうちにかえろう。病院」を開院し、入院患者やその家族が退院後、死ぬまでの時間を自宅で温かく、自分らしい生活を安心して送れるよう、入院中に自宅の環境整備や、在宅医療関連サービスの調整などの介護準備を行えるよう支援をしています。
そして焔として、いざというときに入れる病院がある、入院生活から自宅に移るまでのワンクッションとしての存在として、地域という病院の集中治療室的な存在として、在宅医療に携わっています。
本講演では新病院で取り組んだDXと使用したソリューションについてお話いたしました。
「おうちにかえろう。病院」が取り組むDX
- ナースコール
従来、多くの病院や介護施設で使用されているナースコールは有線型が主流であるものの、この病院ではワイヤレス型ドアフォンのようなシンプルな形の新しいナースコールを採用。ボタンを押すと、各看護師が持つiPhoneに接続され、看護師は映像を確認しながら会話が可能に。
ワイヤレス型がこれまで採用されなかった背景には、Wi-Fiがつながらなかった場合に命に係わるという懸念があったが、実際にはナースコールが故障している病院は数多くあり、さらに認知症患者の場合には手が届かないような場所に設置しているケースが散見された。そのため有線型にこだわる必要はないという判断のもと、見た目をシンプルにしたワイヤレス型のナースコールを採用することで、自宅に帰りたいという気持ちへの後押しになると考えている。
メリットとして、映像による確認ができるため、夜間巡視の必要がなく、また、人感センサーとの連携も可能なため、何かあったときには気づける仕組みになっている。
- 電子カルテ
日本では電子カルテの普及率が低く、全体で6割程度の利用だと言われており、クラウド化されているものは少なかったが、利便性を考え新たにクラウド型の電子カルテシステムを開発。現在、在宅医療業界のトップシェアを獲得。
このシステムによって看護師、事務方、リハビリテーション技師がiPhoneやPCを持ち寄って揃ってカンファレンスを行えるようになった。
PACS画像システムや薬剤情報、検査オーダー、レセプト、食材オーダーなど、各システムとの連携が可能で、関係各所と必要な情報共有を密に行うことができる。また、オンプレミス型とは違い、後から連携したいシステムとの連携設定も容易。
- 遠隔からの患者の見守り
家に帰るための事前調整として、帰宅後に関わることになるヘルパーやケアマネと定期カンファレンスを実施。また、なるべく部屋にいることがないよう、広間での動画視聴などを実施している。当院ではこれらに取り組む患者の様子を医療スタッフが遠隔で見守ることができるようにしている。
- 薬剤室
データで飛んできた調剤情報をもとにピックアップ。薬剤室の出入りを厳密にするため、スマートロックを採用し、誰がいつ入室したかを記録している。
- 空調管理
スタッフフロアや病棟すべてのエアコンの温度調整をすべてクラウドで管理。タイマーも使用し、必要な空調設定を行うことでコスト削減につながっている。
- 厨房の食事管理
多くの病院の食事は中央で作って熱風による加熱方式が採用されているが、温めに2時間かかる上、ご飯や汁物などは温風によって状態が悪くなるため、個別に調理する必要があった。
この医院では電子レンジと同じ方式で温めるシステムを導入することで、15分という短時間での温めが可能となるとともに、個別に調理する必要がないため、火や油、調理スキルが必要なくなり、準備にかかる負担も軽減した。
まとめ
これまで日本の医療は体調を崩せばその後、ずっと病院で過ごすこととなり、欧米に比べ入院期間が長いことがほとんどです。患者を支える家族も病院で過ごしてもらう方が費用面、体力面でも負担が軽いため、入院を喜ぶ傾向にありました。
ですが、昨今の医療情勢においてこの形は望ましいものではなく、地域が患者を支えるのが望ましい時代となりました。そうした中で、家で安全に過ごすために、多様なICTデバイスの登場と、在宅医療と病院が組み合わさって地域を支える発想がこれからは大切な時代になります。そのためには医療情報を医療機関や在宅医療、介護施設が共有する必要がありますが、紙やオンプレではそれが難しくなります。
今後、医療界にとって病院の内外のDXは非常に重要なものとなってくると考えており、当社は新しい地域医療の形を今後も推進していきたいと考えています。
ヤマハ講演(病院内ネットワークに関連する製品紹介)
これからの医療ネットワーク
ヤマハ株式会社コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 里吉一浩氏
ヤマハのネットワーク機器は国内SOHOルーター市場シェアNo.1を17年連続獲得しており、また日経顧客満足度調査ネットワーク機器部門No.1を6年連続獲得しています。現在、累計450万台を出荷しており、非常に多くのお客様からご評価を頂いています。
昨今、大手企業や病院がサイバー攻撃によって被害を受ける事例が数多く発生しており、国内マルウェア検出数は2019年から約70%増加していると言われています。
そこで今回はセキュリティ、院内LAN、これからの院内ネットワークの3点の視点からお話いたします。
- セキュリティ:安全、安心、簡単なUTXシリーズがおすすめ
セキュリティ対策の必要性は理解していても、実際にやるとなれば時間と費用がかかる上、セキュリティやネットワークの専門家が社内におらず、日々の忙しい業務の中では新しい情報を常時キャッチアップする時間はなかなか取れません。
ヤマハのセキュリティソリューションは、既存ネットワークの構成を変更することなく、コストを抑えた形でセキュリティ対策の強化を実現することができます。
各製品はセキュリティ設定が行われた状態で出荷されるため、設置のみでよく、サイバー攻撃等の問題が発生した場合には電話一本で遠隔でのサポートが提供されます。
病院のセキュリティ強化でのおすすめは小規模・中規模向けのUTM製品であるUTX100/UTX200です。
マルウェアや表劇型攻撃など様々な脅威に対抗できるようセキュリティに必要な機能をすべて搭載しており、アプリケーション単位のセキュリティ設定やURLフィルタリングなど自社のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な設定を行うことができます。
なお本製品はRTX830/RTX1220をはじめとした既存のヤマハネットワーク機器との相性がよく、問題が発生したときにはUTXからメールでアラートを通知します。
また、UTXのセキュリティライセンスに付帯しているUTXサポートサービスは、ルーター、スイッチなどの他のヤマハ製品もサポートの対象となり、問題発生時には遠隔による設定支援とトラブルシューティングを受けることができます。
- 院内LAN:画像、IoT機器の各種通信を滞りなく届けるWi-Fi6対応機器+10G PoEスイッチ
多くの病院で院内ネットワークに関することで聞かれる声として、院内機器のレスポンスが遅いのは当たり前というものや、ネットワークの見直しにかかる時間とコストの懸念、そしてネットワークの専門家不在による判断や設定が難しいといったものがあります。
ヤマハWi-Fi6 x 10Gソリューションは、最新のWi-Fi規格であるWi-Fi6は非常に高速であり、その利点を生かせるよう10Gのソリューションとセットで利用することで高速レスポンスを可能とします。
またオール10Gでありながらコストパフォーマンスが非常に高く、GUIによる設定が可能なため、設定が容易です。さらにLAN構築窓口をご利用いただけますので、安心してご利用いただけます。
<Wi-Fi6対応ソリューション>
WLX413はトライバンドで5.9Gbit/sによる通信でさらに高速な通信を実現します。
さらに、Radio Optimization(特許出願中)によって、設置間隔や周波数などの周辺環境を自動学習し、動的に設定を最適化するため、簡単で安心なネットワーク環境を実現します。
本製品との相性が良い製品としては10G対応PoEスイッチSWX2322P-16MTです。両製品を併用することによって、Wi-Fi6 フル10Gをしっかりと生かすことができます。
- これからの院内ネットワーク:すべてのネットワーク機器の相談はヤマハだけで解決可
CTやMRI等によって撮影された画像データは、昔に比べて画質が上がったことで画像の転送に時間がかかるようになりました。また、ナースコール等のIoT機器の増加による無線への負荷増による影響は、ネットワークの停滞を引き起こし、コミュニケーションの遅延など業務へ多大な影響を生みます。
DXの効果を最大限にするためにも、ネットワークをまず整備すること、そして同時に働き方の変革、無線に対応した新たな機器等による付加価値をつけていくことが重要だと考えられます。
これらを実現するためにはネットワークが停止しないための冗長化構成やWi-Fi6による高速無線、セキュリティ対策を行うことをお勧めしています。
当社はこれに必要な機器をトータルで提案することができます。そのため、何か問題が発生した場合であっても、複数社に問合せをする必要がなく、一つの窓口で解決することが可能です。
LAN構築相談窓口にて無料相談を受けています。機器選定から相談に乗っていますので、ぜひご連絡ください。
セミナーの後編は以下よりご覧いただけます。