このコラムは元警視庁の刑事で、現在、自遊空間を運営する弊社ランシステムのCS室室長である青木が社内向けに発信しているものです。弊社では店舗の無人化・省人化ソリューションや遠隔接客を推進しておりますが、このサイトをご覧の店舗経営者やマネージャーの皆様にも有用なコラムではないかと考え、ご紹介いたします。

第12回:キャッシュレス決済で知っておくべきこと
みなさまもご承知の通り、日本でもキャッシュレス決済が普及しています。
いまやキャッシュレス決済は、私達のビジネスや生活に直結する存在です。
今回は、『キャッシュレス決済ビジネスハンドブック』という書籍から、キャッシュレス決済を行う前に、先ずは知っておくべきポイントを共有したいと思います。
1.キャッシュレス決済の普及
本書籍によると、日本でキャッシュレス決済が登場したのは1961年だといわれています。日本ダイナースクラブや日本クレジットビューロー(現・JCB)がクレジットカードを発行し、現金を使わないキャッシュレス決済の手段が誕生したそうです。
国際的にみると、日本におけるキャッシュレス決済は、決済金額全体に占める割合が低水準だといわれてきました。背景の1つとして挙げられるのは、日本特有の口座振替や全銀システムに代表される、金融機関が提供してきた振込・口座振替の利便性の高さです。それでも、個人の決済金額に占めるキャッシュレス決済の割合は年々上昇しており、経済産業省は2025年までにこの比率を4割程度にするという目標を掲げています。スマートフォンの機能が高度化したことに加え、政府による政策の後押しもキャッシュレス決済比率を上昇させているそうです。
なお、書籍によると、政府がキャッシュレス決済を推進する背景として、経済産業省は既存の課題を解決する観点から下記の5点を挙げていました。
- 消費者の利便性向上
- 現金決済に係るインフラコストの削減
- 業務効率化/人手不足対応
- 公衆衛生上の安心の実現
- 現金の保有や取引機会の減少による不正/犯罪の抑止
さらに、新たな未来を創造する観点から、下記の2点を挙げています。
- データ連携、デジタル化
- 多様な消費スタイルを創造
POINT
日本では1961年にキャッシュレス決済が始まった。近年は、スマホ機能の向上や政策の後押しでキャッシュレス決済比率が上昇している
2.日本国内の主流はクレジットカードと電子マネー
キャッシュレス決済の主なサービスとして、ご承知の通りクレジットカード決済、デビットカード決済、電子マネー決済があります。ここでは、3種の仕組みを見ていきましょう。
クレジットカード決済は、これまで最も多く使われてきたキャッシュレス決済です。店舗やオンラインサービスでの商品・サービスの購入には欠かせなくなっており、キャッシュレス決済全体額に占める割合は84.5%となっています。クレジットカード決済のプレイヤーとして知られているのは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club Internationalの世界5大ブランドですね。
これらのブランドが、加盟店審査や登録・管理を行うアクワイアラーに決済システムネットワークを提供し、国際ブランドとカード会員の間を取り次ぐイシュアーにブランドライセンスを発行することで、カード会員は世界中のどこにいてもクレジットカードを利用することができています。なお、決済のモデルとしては、加盟店とアクワイアラーの間で決済処理や入金が直接行われる「直接契約方式」と、決済代行業者と契約することで加盟店が手間やコストを削減できる「包括加盟店方式」があるそうです。
デビットカード決済は、利用者が加盟店でデビットカードを利用して買い物をすると、金融機関口座から即時に引落とされる仕組みです。申込時には、与信審査が不要です。こちらもクレジットカードと同様、国際ブランドによる発行が行われています。
最後に、近年メディアでもよく話題になっている電子マネー決済です。電子マネーは、電子的に保存された残高を使用し、支払いを行います。一般社団法人日本資金決済業協会の発行事業実態調査統計によると、2021年度の電子マネー発行額は約22兆円でした。2021年度に、初めてサーバー管理型の発行額がICチップ型を抜きました。これはAmazonギフト券や、iTunesカードなどの認知度向上や、デジタルコンテンツの需要が増していることなどが理由だと挙げられているそうです。
POINT
クレジットカード決済は、キャッシュレス決済全体の84.5%を占める
3.今後の注目株となるのはEmbedded Finance
世界のキャッシュレス決済は、これからどのように進化していくのでしょうか。
押さえておきたいトピックとして、Embedded Finance(組込型金融)、給与デジタル払い、BNPL、暗号資産、CBDC(中央銀行デジタル通貨)を書籍から紹介します。
Embedded Financeは、非金融事業者が金融機関の金融サービスを自社サービスに組み込んで提供するというものです。例えば、非金融事業者がシステム等のプラットフォームを提供する企業(Enabler)を介して金融機関と連携するケースと、自社でシステムなどを内製化して直接金融機関と連携するケースがあります。特に、Embedded Financeと親和性が高いといわれているのが決済と保険の分野であり、すでに国内事例が多数あります。
給与デジタル払いは、企業から労働者に対する賃金支払いについて、従来の銀行口座などへの振込ではなく、資金移動業者(PayPay、楽天キャッシュ、au PAYなど)のアカウントへ送金するという仕組みです。日本では、1970年代から銀行口座への振込による支払いが主流になっていましたが、2023年4月に労働基準法施行規則が改正され、労働者が同意した場合の例外として、給与デジタル払いが解禁されました。
BNPL(Buy Now, Pay Later)は、利用者が商品などを購入した際に、支払いを後日に分割したり、一括に変更できたりする決済方法です。与信審査が不要、または簡易的であるのと、分割手数料が無料などの特徴があり、導入が進んでいます。利用者にとっては、クレジットカードや銀行口座が無くても利用できる点もメリットです。
暗号資産とは、ご承知の通りインターネット上で取引できるデジタル通貨のことで、ビットコインやイーサリアムなどが有名です。公開鍵と秘密鍵を用いた暗号化技術によって取引のセキュリティが確保された環境で、現物取引や送金を行えます。デジタル台帳であるブロックチェーンによって取引履歴を記録・管理できる点も特徴です。
CBDCは、中央銀行が発行・管理するデジタル形式の通貨です。その国の法定通貨建てで発行され、通貨と同じ価値を持つと認められています。中央銀行が管理するため、中央機関に管理されない暗号資産よりも安全で信頼性が高いとされ、マネーロンダリング防止などの観点からも、これからより多くの層の利用が期待されている様です。
決済ビジネスとして検討する場合、振込、口座振込、デビットカードは既に参入障壁が高いと言われていますが、Embedded Financeは自ら決済手段を持たなくても提供できる決済の仕組みなので、今後の新規参入が増加すると考えられると、著者は最後に言っています。
POINT
非金融事業者が金融機関と連携することで、決済ビジネスに参入してくる
最後までお読み頂きありがとうございます。
※参考文献:『キャッシュレス決済ビジネスハンドブック』(アビームコンサルティング編著/中央経済社)2024年6月出版
お知らせ:人手不足と添付運営を効率化する店舗の省人化・無人化ソリューションについては以下をご覧ください。
