ランシステムCS室室長 青木が語る「店舗接客やリモート接客の極意」第15回:物流の発展が世界をつなぐ

このコラムは元警視庁の刑事で、現在、自遊空間を運営する弊社ランシステムのCS室室長である青木が社内向けに発信しているものです。弊社では店舗の無人化・省人化ソリューションや遠隔接客を推進しておりますが、このサイトをご覧の店舗経営者やマネージャーの皆様にも有用なコラムではないかと考え、ご紹介いたします。

第15回:物流の発展が世界をつなぐ

今回は先日読んだ書籍『物流で世界史を読み解く 交易、移民問題から食文化の革新まで』(参考文献の詳細は末尾に記載)を参考に、物流の発展がいかにグローバリゼーションを推し進め、人々の暮らしや経済を変えてきたのかを、歴史を交えながらお話したいと思います。

目次

物流の発展が世界をつなぎ、経済を進化させた

現代社会を語る上で欠かせないグローバリゼーションは、インターネットの普及により大きく加速しました。例えば、クリックひとつで世界中の商品を購入できるAmazon の登場は、世界の一体化を如実に示す事例です。

そして、世界中の商品が自宅に届く背景には、国際的な物流システムの進化もあります。モノを生産しても、販売しなければ利益は得られません。どのような社会であっても、完全な自給自足をすることは困難であり、物流を押さえて商品を売らなければ、生活は成り立ちません。世界にはさまざまな気候区があり、それぞれの地域で異なる農産物が生産されています。また、天然資源の分布も一様ではありません。人類はこれらを交換することで、生活を豊かにしていったのです。

物流の範囲は、最初はかなり狭かったはずです。しかし、それが次第に広がって世界の物流が一体化し、現代に至ったと考えられます。物流の歴史は「世界の一体化=グローバリゼーション」の歴史です。物流の変遷を読み解くことで、現在の世界がどのように形成され、経済が進化したかを理解する手がかりが得られるのです。

Point
物流の歴史はグローバリゼーションの歴史であり、物流を発展させることで人類は豊かになっていった

物流が経済に影響を与えた主な事例

それでは、物流の発展によって人々の暮らしはどう豊かになり、経済はどう進化していったのでしょう。書籍に書かれていた世界史における代表的な事例をいくつかご紹介します。

1. 漢時代に経済発展した中国の背景

紀元前 141 年に即位した漢の武帝は、中国を統一した秦の始皇帝が行った貨幣や文字、度量衡(長さ・体積・重さの単位)の単一化などの統治政策を受け継ぎました。そして、その影響を中国から東アジアにまで及ぼし、ヨーロッパに先駆けて単一市場を誕生させました。さらに、生産地が限られていた塩と鉄の税収を国家財政に移管するなど、国家が経済に介入し、経済成長を促すシステムを開発しました。これらの政策は、特定の商人の手中にあった物流をより多くの商人へと開放し、当時の中国の経済を大きく成長させたと考えられます。

2. 東インド会社の成功の理由

東インド会社は、イギリスでは 1600 年に、オランダでは 1602 年に創設されました。両社は、軍隊によって東インドでの商業活動を保護し、交易を促進することを目的としていました。加えて、すでにアジアに進出していたポルトガル商人と協力体制をとるなど、国家を超えた巨大なネットワークを築きました。その結果、アジアからの輸入品として重要だった香辛料の輸送をヨーロッパの船舶が担うようになり、ヨーロッパ人はアジアの物流を手中に収めました。その後、蒸気船や電信の発達などの影響を受けて東インド会社は解散に至りますが、国家から自立した商人が、物流システムを大きく変革したことを示す象徴的な事例です。

3. イギリス産業革命を支えた要素

ヨーロッパは農業に適さない地域が多く、砂糖やコーヒーを輸入に依存していました。一方で、バルト海地域では船の帆などに使用する海運資材が収穫されていました。そのため従来は、農業生産と工業生産の分岐による経済成長が産業革命を引き起こしたとする「プロト工業化(工業化以前の工業化)」説が論じられましたが、現代では衰退しています。イギリスの産業革命は、綿織物工業の発展によって始まりました。産業革命以前のヨーロッパでは、綿織物をインドから輸入していました。インドの綿織物は安価で肌触りが良く、広く需要があったためです。そこでイギリスは、植民地で奴隷を使って綿花を栽培させ、自国の工場で動力を用いて綿織物を生産し、世界市場でインドの綿織物の代替品として販売したのです。

プロト工業化が産業革命を生み出したという説は否定されています。しかし、イギリスがバルト海地方から海運資材を輸入し、砂糖やコーヒーなどの植民地物産を輸出するなど、大西洋貿易の基礎が築かれていなければ、産業革命は発生しなかったかもしれません。ヨーロッパに他の地域からの消費財が出回ることで社会が豊かになり、市場での労働時間が増加して産業革命が起こり、人々の生活水準が上昇していったのです。

Point
物流の範囲が広がることで商業活動が多様化し、経済は活性化する。その結果、人々の生活が豊かになっていく

現代の物流に欠かせない POS システム

近代における物流システムの発展といえば POS システムがあります。POS システムの POS とは「Point of sale」の略で、「販売時点情報管理システム」と訳します。小売店やレストランなどで商品やサービスを販売する際に利用され、売上の記録や在庫管理、顧客管理などが一元的に行われます。

例えば、コンビニエンスストアでは、POS システムが提供するリアルタイムの販売データを利用して、「どの商品が売れているか」「どの時間帯に売れているか」などの消費者の購買傾向を予測できます。そして、そのデータをもとに、朝・昼・夕方の時間帯によって陳列する商品を変更することができます。さらに、そのデータに基づいて倉庫で商品が積み込まれ、GPS を利用したトラックが最適な経路で店舗に到着するのです。

POS システムのデータを活用すれば、在庫を的確に把握できます。その結果、食品ロスや保管コストを抑制し、利益の最大化を目指すことが可能です。今や POS システムは、グローバルなサプライチェーン(原材料の調達から消費者に商品が届くまでの供給の連鎖)を支えるために、不可欠な存在と言えます。

Point
商品の管理を総合的に行う POS システム。現代の物流において重要な役割を果たし、食品ロスの削減にも貢献する

当社ではシステム開発等も請け負っています。さまざまな分野で貢献できる事業であることに誇りを持ち、社員一丸となって今後もお客様の発展に寄与してまいります。

※参考文献:『物流で世界史を読み解く 交易、移民問題から食文化の革新まで』(玉木俊明著/PHP 研究所)2025 年 2 月出版

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